小児口腔機能発達不全症とは

小児口腔機能発達不全症は、生まれつきの病気ではありませんが、「食べる」「飲み込む」「話す」といったお口の機能に支障があり、日常生活に問題が生じている状態を指します。
特に15歳未満のお子さまに見られ、自然に改善されることは少なく、専門的な歯科医院での治療や指導が必要とされています。

●症状の例
- 噛む、飲み込む動作がうまくできない
- 食べこぼしが多い
- 食事に時間がかかる
- 発音がはっきりしない、言葉が不明瞭
- 口呼吸が多い、口をポカンと開けている
- 指しゃぶりや爪を噛む癖がある
こういった状態を放置しておくと、歯並びや噛み合わせだけでなく、姿勢の悪化や成長、言葉の発達にも悪影響を及ぼすことがあります。
お子さまの口の機能で気になることがあれば、早めに歯科医院や専門機関にご相談ください。
口腔機能発達不全症の原因
- ●口呼吸
- 口で呼吸する習慣があると口周りの筋肉の発達が妨げられ、顎の成長不足や歯並びの乱れに繋がります。
- ●指しゃぶり
- 幼児期に多い癖ですが、長く続けると口や顎の発育を遅らせる可能性があります。
- ●その他の悪習慣
- 前歯を舌で押す、頬杖をつくなどの癖も口腔機能の発達に悪影響を与えます。悪習慣は放置せず、早めの改善が重要です。
口腔機能発達不全症の治療方法

- ●口腔筋機能療法(MFT)
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- 口や舌などの筋肉を鍛えるトレーニングを行う方法です。
- 無意識のクセに気づき、正しく口腔機能を使えるように練習します。
- 舌の位置を正したり、口の周囲の筋肉を鍛えることで、発音や噛む・飲み込むといった機能を改善します。
- ●歯列矯正
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- 歯並びや噛み合わせに問題がある場合は、矯正治療を行うことがあります。
- 歯列矯正によって食べやすさや発音のしやすさをサポートします。
- 特に子どもの場合、成長に合わせて顎の発育を導き、歯が正しく並ぶようにサポートできる点もメリットです。
- ●言語療法
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- 発音に課題があるケースでは、言語聴覚士と連携しながらトレーニングを進めます。
- 発音のトレーニングを通して、滑舌や話し方の改善を目指します。
- ●口を閉じる筋力のトレーニング
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- 口をしっかり閉じる力(口唇閉鎖力)を高めるトレーニングも有効です。
- 主な方法としては以下のようなものがあります:
- – 指で口元をつまんで上下に動かす
- – 棒状の物を唇でつかむ
- – 専用のトレーニング器具を使う
トレーニング用の器具は歯科医院で相談してみましょう。
治療のゴール

治療のゴールは、単にきれいな歯並びや正常な噛み合わせを獲得することではありません。
「咀嚼(噛む)」「嚥下(飲み込む)」「呼吸」といったお口の基本機能を正しく身につけ、「食べる」「話す」機能を十分に発達させることを目指します。
その結果、歯並び・顎の発育の改善だけでなく、バランスの取れた顔つきや免疫力・集中力の向上、睡眠の質の改善など全身の健康にも良い影響が期待できます。
よくあるご質問
- Q.口腔機能発達不全症とは何ですか?
- A.「食べる」「話す」といったお口の機能が、15歳未満のお子さまにおいて十分に育っていない状態を指します。自然に改善されることは少なく、歯科医院での専門的なアプローチが必要とされています。
- Q.うちの子は大丈夫な気がするけど、診てもらったほうがいいの?
- A.「実は多くの保護者の方が、正しい噛み方や飲み込み方をあまり意識されていません。そのため、歯並びの乱れをきっかけに来院し、初めて「口腔機能発達不全症」と診断されるケースが多くあります。最近では、お子さまの約5人に2人がこの状態に該当すると言われています。
- Q.トレーニングを受けると、どのような改善が期待できますか?
- A.歯並びの改善だけでなく、呼吸や姿勢の改善にもつながる点が大きな特徴です。例えば、口呼吸から鼻呼吸へと変わることで、副交感神経が優位になり、睡眠の質が向上。その結果、免疫力や集中力のアップにもつながります。歯並びについても、場合によっては矯正装置を使わず、トレーニングのみである程度の改善が期待できることもあります。
お子さまの口の機能で気になることがあれば、早めに歯科医院や専門機関へご相談ください。